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FLORA 310W DA3のCPUを換装!

先日オークションでHITACHI FLORA 310W DA3Celeron 2GHzモデルを入手しました。

注意: 以下たまたま私の環境で成功したやり方です。これをマネする時は自己責任でお願いします。当たり前ですが、あなたの環境で成功するかどうか保障できませんし、推奨もしません。液晶の接続ケーブルを切ってしまったり、フロッピーのリボンケーブルを損傷してしまったり、最悪起動しなくなる危険性があります。

この機種はチップセットにSiS 651 + 962Lを採用し、USB2.0を使用することが可能になった最初の310Wモデルになります。内部的にはFSB533MHzが使用可能になり、そのために使用可能プロセッサがPentium4 2.8GHzまでとなりました。

実際、日立のWebサイトに残っているラインアップ情報にはCeleron 2GHzモデル(FSB 400MHz)の横にP4 2.8GHzモデルと2.66GHzモデル (FSB 533MHz)が並んでおり、CPU換装が可能な雰囲気があります。しばらくCeleron 2GHzで使ってみて、やはりちょっと遅いかなと感じていたので、思い切ってCPU換装に挑戦することにしました。

1. CPUを入手

選択肢としては
a. FSB400MHzのPentium4 高クロックモデル(2.60GHzとか)
b. FSB533MHzのPentium4 2.80GHz、2.66GHz
c. FSB533MHzの最近のCeleron (335 = 2.8GHz)とか
などがありますが、BIOSアップデートの記述で、「D1ステップに対応」と書いてあったことからNorthwoodしか対応していないのではないか? と予想しました。そうするとc.(Prescott)は危険度が高く、同じくPentium4 2.80A GHz(Prescott)もヤバそうです。(未確認)

しばらくNorthwoodのP4 2.80G/2.66Gあたりをオークションでウォッチしていたのですが、はっきり言って割高でした。たまたまkakaku.comのCPUのところを見てみると、P4 2.80G Northwoodをバルク品で新品で売っているところを見つけ、値段もそこそこ(1万8000円くらい)であったことから、これを試してみることにしました。

ちなみに、CPUアップグレード製品で有名な米PowerLeapではSocket423用ゲタとセット販売のみでFSB 400MHzのP4 2.80GHz という、"ありえなーい"CPUを台数限定で売っています。FLORA では423ゲタは使用できませんが、それでもよければ1. の方法でも2.80GHzまでいける(かも知れない)ですね。

あ、その前にP4 2.4GHz (FSB 400MHz)を持っていたこともあったのですが、知人に進呈してしまいました。

2. 裏ふたを開けてみる

まずお約束として、上記最新版のBIOSにアップデートします。

さて、電源ケーブルを抜いて(出来ればチャージも放電させます)裏ふたを開けます。
この液晶一体型FLORAの場合、裏ふたは下部の2箇所のネジで止まっています。この2つのネジをはずして、例の何箇所かあるツメを注意深くはずしていくと、最後に上部のみちょうつがいでつながったような形になります。さらに90度以上開けると上部も外れて、マザーボード、CPU(および大き目のファン)、電源などを見ることが出来ます。DIMMメモリスロットも2つ見えます。ここはマニュアルのメモリ増設方法の説明が参考になります。

ちなみにすべてのネジはネジロック剤が使用してあります。

そして、電源部の2つのネジをはずすとこれが少し傾くようになっており、マザーボード全体が見渡せるようになります。よく見ると下部に3つのジャンパーピンらしきものと2つのディップスイッチが見えます。ただ、普通の市販マザーボードの場合、シルクで設定方法が印刷されていたりするのですが、このマザーボードの場合それらしい印刷は存在しません。またメーカー名らしき印刷も見えないので、???となりました。

SANY0203
内部の様子(写真の左が本体上部になります)

3. とりあえず換装

ヒートシンクをはずしてみると(ファンのケーブルに注意)、いっしょにCeleron 2GHzが取れてしまいました。そこで、普通にP4 2.80GHzを取り付け放熱グリス、ヒートシンク、ファンを取り付けたところで電源ケーブルを挿し、電源を入れてみました。するとBIOS画面で

100MHz x 21.0 = 2.10GHz

と表示されます。とりあえず問題なくOSまで動くのですが、ここはやはり133MHz x 21.0 = 2.80GHzにならないと不満です。少なくとも(最近主流の)CPU自動認識マザーではないような雰囲気です。

4. マザーボードを調査

しばらくこのまま使っていたのですが、以前と比べてそれほど高速化したような気がしません。ある日Crystal CPU IDを動かしてみたところ、マザーボードのメーカーと種類が表示されていることに気がつきました。

FloraBIOSInfo

調べてみるとメーカー名「WISTRON」とは、元ACEROEM(というかEMS)事業部であることがわかりました。とはいっても現行のAOpenマザーボードとは全く類似点もなく、また、マザーボード名「S86P2-2」で検索しても何も情報が出てきません。

そこで、何か手がかりになる情報はないかと、S86P2-2マザーボードをはずして本格的に調べてみました。(液晶接続用のケーブルに注意!)すると、

a. マザーボードには「P86PII」というシルク表示がある。
b. ジャンパはひとつがBIOS CMOSクリア、もうひとつがBIOS書き換えイネーブル(?)らしい。最後のひとつはCNとシルクがあるので、何らかの拡張コネクタ用途のようだ。
c. マザーボード裏面やCPUヒートシンクの下、ケース内部も含めてディップスイッチ設定情報はどこにもない。
d. PLL ICの型番は「ICS 952001AF」と書いてある。

この時点で、CPU自動認識ではなく、またICS 952001AFのデータシートにCPUクロック133MHzの組み合わせがあることから、ディップスイッチ設定でFSB533(CPUクロック133MHz)に設定するのではないかという説に傾いていました。ためしに元の設定をメモして、1つずつ逆に設定にしてみたところ、ひとつだけCPUクロックが101MHz相当になるスイッチがあることに気がつきました。PLL ICのデータシートには5つの設定入力があるように記述されており、その中にも101MHzになる組み合わせが書いてあります。そこでPLL ICとディップスイッチの間の設定をテスターであたったりしてみましたが、どうも直接つながっているような感じではありません。(むしろチップセットとつながっている)

そこで、FSB 101MHzになるスイッチの見つかったSW2を重点的に16とおりすべて調べてみました。(スイッチを切り替えてはBIOS表示を見る) すると、すぐにうち1ビットはCPUクロックとは関係ない(どうもメモリタイミングの切り替えらしい)とわかり、残りの8とおりは以下のように判明しました。

bit1 2 3
on on on 起動せず
on on off 108MHz
on off on 100MHz
on off off 133MHz
off on on 100MHz (初期状態)
off on off 101MHz
off off on 100MHz
off off off 133MHz

ということで、CPUクロックが133MHz(FSB 533MHz)になる組み合わせが見つかりました。

SANY0202
変更後のディップスイッチの様子(右がSW2)

これでOK!ということで各部を見直して慎重に裏ふたを閉め、おもむろに電源スイッチを入れてみたのですが、全く起動しません!!!電源ランプは付くのですがファンも廻らず...これはやってしまったか!とアセったのですが、結局DIMMメモリが正しく奥まで挿さっていないことに気づき、しっかり挿しなおすと問題なく起動するようになりました。

CPU換装後の体感ですが、やはり明らかにレスポンスがあがっています。実は日立のパソコンはリース落ち品としてオークションにも多数出品されるのですが、現在はまだ前の機種(DA2)やその前の機種(DA1)が主なので、同様のCPU換装は不可能です。もうしばらくするとDA3のリース落ち品も現れるかと思いますが、その頃にはP4 2.80GHzは全く入手不能になっているかもしれませんね。

下にCrystalCPUIDの画面結果を掲載してこの項を終わります。

FloraCPUID